上部消化管
診療責任者
- 宮井 博隆
-
- 上部消化管外科部長
患者の皆さまへの一言
外科治療はその過程で、手術の切開創、臓器の摘出と再建、術後疼痛、化学療法など患者さんに何らかの負担をもたらす治療法です。医学的にはこれを侵襲といいます。当科では上部消化管における悪性・良性・緊急疾患に対し、この侵襲を可能な限り少なくするため、症例ごとに治療方針や手術方法を検討し、常に最新で、最も安全・効果的な外科治療を行うことを心がけています。
患者さんには十分な説明を行ってから治療を開始していますが、疑問などございましたら納得いくまでご相談ください。
代表的な対応疾患
- 食道・胃・十二指腸・小腸における悪性腫瘍(がん)と良性腫瘍
- 食道裂孔ヘルニア、逆流性食道炎などの良性疾患
- 胃十二指腸潰瘍の穿孔出血、腸閉塞、外傷による臓器損傷などの緊急疾患
診療内容
上部消化管(食道・胃・十二指腸・小腸)の疾患を中心に診療しています。
- 食道
- 食道がんに対する治療は、日本食道学会による「食道癌診療・治療ガイドライン」に基づいて行っています。食道がんはその進行度に応じて手術・化学療法(抗がん剤治療)・放射線療法を組み合わせて行う必要があります。そのため当院では消化器内科、放射線診断科、放射線治療科、麻酔科と連携し食道がんに対し集学的な治療を行っています。食道は3領域(頸部・胸部・腹部)に連続し、また、生命維持に直結する循環器・呼吸器が隣接するという解剖学的に特殊な臓器であるため、その手術の難易度は高く、患者さんにも高侵襲な手術となります。当科ではこの手術を低侵襲なものとするため、内視鏡外科手術である胸腔鏡腹腔鏡下食道切除術を導入し、現在までに40例を行っています。
その他、逆流性食道炎やアカラシアなどの食道疾患に対しても積極的に内視鏡外科手術を選択しています。 - 胃
- 胃がんに対する治療は日本胃癌学会による「胃癌治療ガイドライン」に基づき行っています。胃がんの手術は大きく分けて、胃を全部摘出する胃全摘術と、幽門側・噴門側・部分切除などの胃切除術があります。ガイドライン上、内視鏡外科手術である腹腔鏡下胃切除術は早期がんに対して臨床研究の位置付けで治療の選択肢となっています。しかし、この腹腔鏡下胃切除術は標準化が行われておらず病院・施設によって適応や手術成績・手術件数が異なっているのが現状です。
技術の進歩に伴い、腹腔鏡下手術の割合は飛躍的に増加しています。当科では症例ごとに専門チームで検討し、患者・家族の皆さまと十分に相談し同意を得たのち、腹腔鏡下胃切除の適応を拡大し、早期胃がんだけではなく進行胃がんにも、また、胃切除術だけでなく胃全摘術にも腹腔鏡下手術を行っています。術前・術後の抗がん剤による化学療法はがんの進行度に合わせて常に最新の科学的根拠のある方法を選択し、治療効果を上げるよう努めております。
その他、胃の良性腫瘍、潰瘍穿孔などの緊急疾患にも可能な限り内視鏡外科手術を選択して行っています。 - 十二指腸・小腸
- 十二指腸潰瘍穿孔や出血、腸閉塞などの緊急症例は症例に応じて手術または保存的治療を選択し、手術は適応を検討し可能であれば内視鏡外科手術を行っています。
腫瘍は比較的少ない病気ですが、患者・家族の皆さまとご相談しながら治療を行っています。
診療方針
当科での治療は消化器内科、麻酔科、放射線診断科、放射線治療科など他科との連携のもと、積極的に最新の治療法を取り入れ、手術を中心とした集学的治療を行っています。手術に関しては日本内視鏡外科学会技術認定医や日本消化器外科学会専門医を中心とした専門チームにより症例ごとに十分に検討し、可能な限り低侵襲な内視鏡外科手術を導入しています。設備に関しても高性能な機器を導入、随時更新しており、2013年2月には「ダヴィンチSi」を導入しロボット支援手術も可能となっています。当科での治療が患者さんにとって最新最良で低侵襲の治療法となることを常に目指しています。
診療実績
疾患別の治療・手術・検査実績(件)
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | ||
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食道腫瘍 | 胸腹腔鏡下食道切除術 | 4 | 7 | 4 |
開胸開腹食道切除術 | 0 | 0 | 0 | |
その他(バイパス、姑息手術など) | 1 | 1 | 2 | |
その他の食道疾患 | 腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア修復術 | 1 | 1 | 1 |
腹腔鏡下食道アカラシア根治術 | 0 | 0 | 0 | |
食道静脈瘤手術 | 2 | 1 | 0 | |
胃腫瘍 | 腹腔鏡下胃全摘 | 28 | 16 | 21 |
腹腔鏡下胃切除術 | 38 | 36 | 12 | |
ロボット支援下胃切除術 | 2 | 8 | 33 | |
腹腔鏡下部分切除術 | 3 | 1 | 3 | |
開腹胃切除術 | 1 | 3 | 1 | |
その他(バイパス、姑息手術など) | 3 | 1 | 3 | |
その他の胃疾患 | 胃穿孔に対する腹腔鏡下修復術 | 1 | 1 | 1 |
胃潰瘍出血開腹手術 | 2 | 1 | 0 | |
その他(胃瘻造設など) | 1 | 0 | 0 | |
十二指腸、小腸腫瘍 | 腹腔鏡下小腸切除術 | 15 | 9 | 5 |
開腹小腸切除 | 2 | 6 | 5 | |
その他(バイパスなど) | 8 | 11 | 2 | |
十二指腸潰瘍、憩室穿孔 | 腹腔鏡下大網充填術 | 5 | 3 | 1 |
腹腔鏡下胃切除 | 0 | 0 | 0 | |
憩室穿孔手術 | 0 | 0 | 0 | |
開腹手術 | 0 | 0 | 0 | |
腸閉塞、小腸穿孔 | 腹腔鏡下腸閉塞解除術(腸切除を含む) | 16 | 19 | 15 |
開腹腸閉塞解除術(腸切除を含む) | 1 | 2 | 3 | |
外傷 | 開腹小腸切除術 | 1 | 0 | 0 |
医師紹介
氏名 | 役職 | 出身大学 | 医師免許取得年 | 主な専門領域 | 指導医・専門医・認定医など |
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宮井 博隆 | 上部消化管外科部長 | 名古屋市立大学 | 2000年 | 消化器一般外科、 上部消化管外科 |
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田中 守嗣 | 病院長 | 名古屋市立大学 | 1981年 | 消化器一般外科、 肝胆膵外科 |
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小林 建司 | 副院長 外科統括部長 |
名古屋市立大学 | 1986年 | 消化器一般外科、 下部消化管外科 |
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山本 稔 | 消化器外科部長 | 名古屋市立大学 | 1993年 | 消化器一般外科、 肝胆膵外科 |
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廣川 高久 | 消化器外科医長 | 山梨医科大学 | 2003年 | 消化器一般外科 下部消化管外科 |
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齋藤 正樹 | 消化器外科医員 | 名古屋市立大学 | 2012年 | 消化器一般外科 | |
江口 祐輝 | 消化器外科医員 | 金沢医科大学 | 2014年 | 消化器一般外科 |
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木村 将 | 消化器外科医員 | 名古屋市立大学 | 2016年 | 消化器一般外科 | |
上田 晶彦 | 消化器外科医員 | 名古屋市立大学 | 2017年 | 消化器一般外科 | |
髙阪 重行 | 消化器外科医員 | 名古屋市立大学 | 2018年 | 消化器一般外科 | |
山本 誠也 | 消化器外科医員 | 名古屋市立大学 | 2019年 | 消化器一般外科 |